○急性中耳炎診療スコアシート(2013年版)(急性中耳炎は、重症度に応じた治療が求められる、という)
・24ヵ月齢未満児は、耳の異常を言葉で発しないので、中耳炎がみつかった時点で重症になっていることが多い。
・耳痛は鼓膜が膨隆する際に、鼓膜が引っ張られることによって起こるので、膨隆が止まったり、穿孔して耳漏が始まれば、軽快する。
・発熱は気道感染症に伴う全身症状として現れるものであり、中耳炎だけで発熱することはない。
・研究目的では、スコアを決めて細かく重症度分類するのもよいが、実際の臨床では鼓膜所見でおおまかに軽症、中等症、重症と判定するだけで十分であろう。
○小児急性中耳炎症例の治療アルゴリズム
○抗菌薬非投与3日間経過観察は妥当か?
・多くの急性中耳炎は、抗菌薬非投与で軽快すると報告されている。実際、100年前にも急性中耳炎はあったはずであるが、抗菌薬がなくてもほとんどの人は、自然治癒していたはずで、慢性化したり合併症を起こしたりするのは数%程度ではなかったかと思われる。現代においては患者さんは早く、確実に治ることを期待して医療機関を受診しており、抗菌薬非投与3日間経過観察を指示するのは困難である。
○抗菌薬は何を使用するか?
・AMPC(サワシリン、ワイドシリン)は肺炎球菌やインフルエンザ菌の半数が耐性化していると言われている。なぜ、半数に効かないとわかっている抗菌薬をファーストチョイスにするのかわからない。AMPCを投与すれば、感受性菌は死滅して、耐性菌だけが残って、耐性化率が上がるだけではないか。
・CVA/AMPC(クラバモックス)はPRSP(耐性肺炎球菌)には有効であるが、BLNAR(耐性インフルエンザ菌)には無効である。
○抗菌薬の投与期間はどのくらいが適切か?
・抗菌薬の臨床効果の発現は早ければ投与後3日目にみられるというのは確かであるが、3日分処方というのは、実際の外来診療では1日おきに通院を指示することになり、多忙な患者さんでは困難である。4〜5日分処方するのが現実的であり、実際それで完治することも多い。
○抗菌薬の高用量投与は効果があるか?
・AMPC(サワシリン、ワイドシリン)倍量にしても、単にMICが1管高い菌に有効になるだけである。それよりも有効な他剤に変更すべきである。
・CDTR-PI(メイアクト)倍量にしても、単にMICが1管高い菌に有効になるだけであリ、あまり意味がない。
・CDTR-PI(メイアクト)無効例では、肺炎球菌が起炎菌として想定される場合には、オラペネム、起炎菌不明の場合にはオゼックスを使用すべきである。
○鼓膜切開は効果があるか?
・鼓膜切開が急性中耳炎を有意に治癒促進するという報告は少ない。確かに排膿を行ったほうが、治癒が早いし、滲出性中耳炎に移行する頻度も少ないと思うが、鼓膜切開をすると、鼓膜線維が切断されるため、閉鎖治癒したあと鼓膜の菲薄化するし、時に永久穿孔になることもある。排膿が目的であれば、鼓膜穿刺で十分であり、穿刺であれば繰り返し行っても後遺症を起こすことは滅多にないので、私は鼓膜穿刺で十分でないかと考えている。
○抗菌薬点滴は効果があるか?
・AMPC(サワシリン)無効例にABPC(ビクシリン)点滴を行っても、あまり効果は期待できないのではないか。
・CTRX(ロセフィン)点滴は効果があるかもしれないが、必要としたことはない。