○鼻漏
鼻汁の分泌量は1日に6リットルにも達するといわれ、無意識のうちに繊毛運動で咽に運ばれ嚥下されているが、自覚することはない。感染及びアレルギーによる炎症により鼻汁が過剰に分泌され、意識されるようになったものを鼻漏という。鼻漏が多量の場合は、鼻孔から流れ出るが、量が少ない場合には、繊毛運動により運ばれ、咽に流れてきて、これを後鼻漏という。
鼻漏はその性状から2種類に分類される。
①水様(透明)鼻漏
水様鼻漏がみられるのは次の2つの場合が考えられる。
ⅰ. 風邪の初期のウイルス感染のみの段階で出る鼻漏であり、細菌感染に移行しなければ、数日で止まっていく。
ⅱ. アレルギー反応に伴い分泌されるものであり、刺激が加わった時に出る。
②粘・膿性(白~黄色)鼻漏
細菌感染に伴って生ずるものであり、黄色は白血球の死骸である。その他にも、真菌感染、悪性腫瘍に伴う感染でも生ずることがあるので注意が必要である。ほとんどは副鼻腔炎によるものであるが、時にレントゲンで副鼻腔に影がみられないことがあり、この場合は、化膿性鼻炎と命名する。
要は:透明な鼻水であれば、ほとんどはアレルギー性鼻炎であり、濁った鼻水であれば、副鼻腔炎であり、この2大疾患が9割以上を占めるが、その他の疾患もまれにあるので注意が必要である。
○鼻閉
鼻閉は、アデノイド増殖症や腫瘍性病変などを除けば、下甲介の腫脹によって生じる。その原因疾患として、アレルギー性鼻炎と副鼻腔炎が挙げられる。
①アレルギー性鼻炎では、アレルギー反応で放出されたロイコトリエン、ヒスタミンなどが鼻粘膜血管に作用して、血管透過性亢進、静脈叢の血管拡張、血流うっ滞を起こし、鼻閉となる。
②副鼻腔炎では、副鼻腔から流出した膿性鼻漏の刺激で鼻腔粘膜の腫脹が起こって、鼻閉となるといわれているが、粘膜上皮のみの腫脹のため、その程度は軽い。ただし、鼻茸ができて、大きくなると慢性的な鼻閉が起こる。
③肥厚性鼻炎では、鼻腔粘膜の慢性的な腫脹がみられるが、原因として、アレルギー性鼻炎がベースにあることが多い。体質的に、下甲介骨の発育が過剰で、鼻腔が狭い場合に鼻閉を訴えることが多い。
④鼻中隔彎曲が鼻閉の原因になるという説があるが、彎曲症の場合、凸出している側は鼻閉になるが、反対側はかえって広くなるわけで、鼻閉を訴えることは少ない。反対側に肥厚性鼻炎が起こると、鼻閉を訴えるようになる。
○対処法:鼻閉の原因として、ほとんどの場合、アレルギー性鼻炎が関与している。対処法としては
a)内服薬:抗アレルギー剤、特にトロンボキサン受容体拮抗薬(バイナス)、ロイコトリエン受容体拮抗薬(オノン、キプレス、シングレア)が、鼻閉に効果があるとされているが、重症例には効果が乏しい。ステロイド系(セレスタミン等)はかなり効果があるので、季節性アレルギーで、速効性を期待する場合には短期間に限り使用するのもよいと思う。
b)ステロイド点鼻薬:鼻閉に効果があるとされており、確かに有効例はあるが、無効例も多い。
c)血管収縮剤:鼻閉に対して速効性(5分程度で効果発現)かつ確実な効果がある。昔から、プリビナ、ナーベル、ナシビン、トラマゾリンが使われてきたが、私は苦味が少ないことから、トラマゾリンを頻用している。長期連用すると点鼻薬性鼻炎を起こして、反挑性に鼻閉が強くなるといわれているが、自験例では何年も連用している患者がいるが、効果がなくなることもないし、鼻閉が悪化することもないように思う。1日3回程度の点鼻でコントロールできる場合には、トラマゾリン点鼻を連用しても問題はなく、特に副作用で困ったこともない。ただし、4回以上の点鼻が必要な患者には、外科的処置を勧めている。2歳未満の乳幼児には禁忌とされているが、乳幼児でも重症の鼻閉で他に有効な手段がない場合には、生理食塩水で2倍に希釈して短期間使用することもある。
d)下甲介切除術:腫脹の主体が粘膜であることから、粘膜を十分に切除することが大切である。下甲介骨が大きい場合には、必要に応じて骨も一緒に切除する。問題は、出血が多い感じがすることで、手術時は血管が収縮しているため、出血しないが、2日後に圧迫止血ガーゼを抜去する時に流れるように出血するがボスミンガーゼで止血は容易である。粘膜下下甲介切除術を推奨している成書もあるが、粘膜を切除しなければ、あまり効果がないとと思う。
e)トリクロル酢酸塗布:80%トリクロル酢酸を下甲介の粘膜に塗布すると、粘膜が凝固し、1週間程度で剥離して鼻腔が広くなるという方法であるが、凝固する深さが浅いため、それほどの効果は期待できない。
f)ハーモニックスカルペル:鼻腔を十分に麻酔した後、ハーモニックスカルペル(超音波メス)の接触子を粘膜にあてて、熱で粘膜を凝固させる。接触子でなでるだけで、広範囲の粘膜を凝固できるので、私は経験がないが、よいかもしれない。
g)レーザー:粘膜をレーザーで焼灼する方法であるが、炭酸ガスレーザーでは、表面が1mm程度しか焼灼できないし、点状にしか焼灼できないので、全体を焼灼するには時間がかかることと、数回の処置が必要であるとされるが、私は経験がない。
h)アルゴンプラズマ:アルゴンプラズマで、粘膜を焼灼する。やや深くまで焼灼できるし、場合によっては切除もできるので、かなり有効と思うが経験はない。
i)高周波電気凝固術:下甲介に2本針を刺し、その間に高周波電流を流して、粘膜を凝固する。電流をどれくらい流すか、経験が必要な手技かと思う。私は経験ない。
○オレ流の対処法:まず、抗アレルギー剤内服とステロイド点鼻液を処方し、ついでに血管収縮剤(トラマゾリン)を鼻閉時屯用で使用するよう指導する。人によって、抗アレルギー剤内服単独でも効果がある場合もあり、ステロイド点鼻液のみで効果がある場合もある。両剤で効果がない場合でも、血管収縮剤は効果があることが多いので、1日3回以内の使用であれば、長期使用も差し支えないであろう。副作用の経験もないし、点鼻薬性鼻炎の経験もない。但し、症状が強くて3回以内の点鼻でコントロールできない場合には、外科的処置を勧めている。各種の近代的装置が導入され、それなりの評価を得ているが、もっとも単純な下甲介切除術が簡易でよいと考えている。
2011.11.14
○耳鼻咽喉科医のための咳の見方
咳は、気道内に貯留した分泌物や異物を気道外に排除するための生体防御反応の一つであるが、平常状態では起こることはなく、咳が出ること自体が病的な状態である。咳嗽の性状による分類では、喀痰を排出するためり生理的咳嗽としての湿性咳嗽と、咳嗽が一次的に発症する病的咳嗽としての乾性咳嗽に分類される。
○咳の持続時間による分類
①3週間未満:急性咳嗽
急性上気道炎、感染後咳嗽が多い。
②3週間以上8週間未満:遷延性咳嗽
③8週間以上:慢性咳嗽
咳喘息、副鼻腔気管支症候群、胃食道逆流症、アトピー咳嗽、慢性気管支炎が多い。
○咳の成因別分類
①生理的反射:誤嚥により侵入した異物を排除しようとする反射運動、また、過剰に分泌された痰を喀出するための反射運動であり、湿性咳嗽(咳のたびに喀痰を伴い、その痰を喀出するために生じるもの)を伴うことが多い。
②アレルギー:気道が特定の刺激に対して過敏になっていて、刺激を排除するために過剰な咳が起こる。乾性咳嗽(喀痰を伴わないか少量の粘液性喀痰を伴うもの)である。
③咳受容体に対する刺激:癌などにより、咳受容体が刺激されて起こる咳。
○咳の原因別分類
①気道感染: ウイルス・細菌・マイコプラズマ・クラミジア・百日咳菌による咽喉頭炎、気管支炎など
特徴: 感染症状(発熱、疼痛、膿性痰など)を伴うことが多い。
②アレルギー: 喉頭アレルギー、気管支喘息など
特徴: 掻痒感を伴う。「咳ばらい」は掻痒感に伴って起こると考える。
③その他: 肺癌、肺結核、気管内異物、薬剤の副作用など
特徴: 薬物療法に反応しない激しい咳のことがある。
頻度としては、①と②が99%以上であり、特に慢性に経過する咳では②が多い。
○慢性咳の原因疾患
図3は、名古屋市立大腫瘍・免疫内科学教授の新実彰男氏にが7つの医療機関と共同で調べた、遷延性・慢性咳嗽の具体的な原因疾患である。3週間以上咳が続いている16歳以上の初診患者を対象に、胸部X線検査の異常や熱、血痰のある患者を除外し、喘鳴や息切れのある場合は含めたところ、咳喘息が42.2%と最も多く、喘息28.4%、アトピー咳嗽7.3%、COPD6.7%と続いた。
①アトピー咳嗽
アレルギーの場は、喉頭から気管に限局している。耳鼻咽喉科では、喉頭アレルギーと診断されることがある。気管支の狭窄を起こさないので、気管支拡張剤は無効である。症状の季節性、咽喉頭のイガイガ感や掻痒感、アレルギー疾患の合併(特に花粉症)
②咳喘息
アレルギー反応の内で、即時相のみを反復して起こしているもの。咳と水様痰が主であり、気道の浮腫を起こさない。アレルギー性鼻炎になぞると、くしゃみ・鼻漏型ということになるが、気管の収縮を伴うところが異なる。夜間~早朝の悪化(特に眠れないほどの咳や起座呼吸)、症状の季節性・変動性
③喘息
アレルギー反応の内で、遅発相が主体のもの。気管支の浮腫を起こすため、喘鳴を伴う。
④COPD(慢性閉塞性肺疾患)
肺に慢性化膿性炎症があり、さらにアレルギーの関与がある。減喫煙者の湿性咳嗽
⑤GERD(胃食道逆流症)
胃酸が食道を逆流し、喉頭に達すると刺激により、咳がおこるという。食道症状の存在、会話時・食後・起床直後・上半身前屈時の悪化、体重増加に伴う悪化、亀背の存在
⑥副鼻腔気管支症候群
慢性・反復性の好中球性気道炎症を上気道と下気道に合併した病態と定義され、日本では慢性副鼻腔炎に慢性気管支炎、気管支拡張症、あるいはびまん性汎細気管支炎が合併した病態をいう。慢性副鼻腔炎の合併があると後鼻漏の刺激により、咳が出るという。慢性副鼻腔炎の既往・症状、膿性痰の存在
⑦後鼻漏による慢性咳嗽
後鼻漏の原因は慢性副鼻腔炎およびアレルギー性鼻炎が多いとされている。治療は咳自体を中枢性鎮咳薬で止めるのではなく、咳の原因である後鼻漏を止めることを優先する。
⑧マイコプラズマ
飛沫感染で、潜伏期間は2~3週である。7~8割の患者が病初期に38℃の熱を2~3日間経験する。そして9割以上は昼夜に関係なくひどい咳が出るけれど、病初期は痰が出ない。家族や職場などで周囲に同じような症状の人がいるのが特徴。患者の3~10%が肺炎に進行する。
診断はLAMP法(遺伝子を増幅する)か、4週間以上の間隔で2回採血してペア血清の抗体価が4倍以上で診断確定とする。単一血清でも、320~640倍以上で確定診断とされている。イムノカードマイコプラズマ抗体は酵素免疫測定(EIA)法で、血清または血漿中の抗マイコプラズマ(IgM)抗体を検出する。10分以内で結果判定が可能であるため使用頻度が高まっている。しかし、再感染や高齢者ではIgM抗体の応答が弱く、またIgM抗体が感染後長期間検出されることから、IgM抗体のみによる診断法は偽陽性を招きやすいことに注意が必要である。
⑨百日咳
38℃を超える熱が出ることは少ない。2週間以上続く咳で、
(1)発作性の咳こみ
(2)吸気性笛声(whoop)
(3)咳込み後の嘔吐
のいずれかの症状を1つ以上伴う場合は、臨床的に百日咳とされる。
飛沫感染で、通常の潜伏期間は7~10日程度であるが、3週間以上のこともある。
診断はLAMP法(遺伝子を増幅する)か、抗体値の変化をみる。PT(百日咳毒素)のIgG抗体価が4週間以上の間隔で2回採血したペア血清で4倍以上の抗体価上昇があるか、4週以降で100EU/mL以上であればワンポイントでも百日咳と診断できる。
IgMは2~4週間でピークになる。診断は非常に難しい。
⑩肺炎クラミジア
飛沫感染で、潜伏期間は2~3週間である。少年期から青年期に初感染し、壮年期以降は再感染を来す。肺炎クラミジアは市中肺炎の1割程度に関与しており、マイコプラズマと異なり高齢者に多いとされている。
発熱がない長引く咳を示し、周囲に同じような症状の人がいる。
診断はLAMP法(遺伝子を増幅する)か、4週間以上の間隔で2回採血してペア血清で抗体値の変化をみる。IgGがペア血清で上昇しており、IgM抗体が上昇していれば初感染、上昇していなければ再感染と考える。
⑪肺結核
⑫肺癌
血痰がある場合は、全例に胸部CT検査を実施すべきである。
○長引く咳の問診で聴取すべき主なポイント(大林浩幸氏による)
アトピー咳嗽 | 咳喘息 | 喘息 | COPD | GERD | 副鼻腔気管支症候群 | マイコプラズマ | 百日咳 | 肺炎クラミジア | 肺結核 | 肺癌 | 薬剤性 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
咳の継続期間 (3週間以上か、8週間以上か) |
3週間以上 | 3週間以上 | 3週間以上 | 3週間以上 | 3週間以上 | 3週間以上 | 3週間未満 | 3週間以上 | 3週間以上 | 3週間以上 | 3週間以上 | 3週間以上 |
咳が好発する時間帯 (夜間か、1日中か) |
夜間 | 夜間 | 夜間 | 1日中 | 1日中 | 1日中 | 1日中 | 1日中 | 1日中 | 1日中 | 1日中 | 1日中 |
咳のパターン (突発性か、持続性かなど) |
突発性 | 突発性 | 突発性 | 持続性 | 持続性 | 突発性 | 持続性 | 突発性 | 持続性 | 持続性 | 持続性 | 持続性 |
痰の有無と性状 | - | - | ○ | ○ | ○ | |||||||
喉の痛み、発熱などの 上気道炎症状の先行の有無 |
△ | △ | △ | - | - | △ | △ | △ | △ | - | - | - |
息切れ、喘鳴など他の 呼吸器症状の有無 |
- | - | ○ | ○ | - | - | - | - | - | - | - | - |
喫煙習慣の有無、喫煙歴 | - | - | - | ○ | - | - | - | - | - | - | △ | - |
アレルギー性鼻炎や 副鼻腔炎などの鼻症状の有無 |
アレルギー性鼻炎 | アレルギー性鼻炎 | アレルギー性鼻炎 | - | - | 副鼻腔炎 | - | - | - | - | - | - |
アトピー素因の有無、 季節性か通年性か |
アトピー素因 季節性あり |
アトピー素因季節性あり | アトピー素因季節性あり | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
ペット飼育、職業歴、海外渡航歴 | ペット飼育 | ペット飼育 | ペット飼育 | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
胸やけなど胃食道逆流症状の 有無 |
- | - | - | - | ○ | - | - | - | - | - | - | - |
常用する他疾患の治療薬の有無 (ACE阻害薬など) |
- | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | ○ |
○感染性咳嗽が疑われる成人患者の診断(咳嗽の持続期間が3週間までの場合)
以下のいずれかの所見が当てはまれば感染性咳嗽を疑う
・感冒様症状が先行している
・咳嗽が自然軽快傾向である
・周囲に同様の症状の人がいる
・経過中に正常の変化する膿性痰がみられる
治療は
・咳嗽のピークを過ぎている場合は、対症療法で経過観察
・咳嗽のピークを過ぎていない場合は、マイコプラズマ/肺炎クラミジア/百日咳を疑う。百日咳は特有の咳嗽(whooping cough)や嘔吐を伴うほどの強い咳嗽発作があれば疑う。マイコプラズマや肺炎クラミジアは、周囲に同じ症状の人がいる場合に疑う。
(日本呼吸器学会「咳嗽に関するガイドライン第2版」(2012年)
○オレ流の咳の診方
咳といえば、通常は内科に受診することが多い。内科で上気道炎の治療を受けても咳が止まらないため、耳鼻咽喉科を受診する患者が多く、慢性咳になっていることが多い。上記のデータより、遷延性・慢性咳嗽の原因疾患の3/4以上はアレルギー性のものといわれているので、問診でGERDや薬剤(ACE)によるものを除外できれば、アレルギー性の咳と考えてよいであろう。とりあえず、抗アレルギー療法を2~3週間試みてみて、効果があればアレルギー性のものとして治療を継続してもよいが、もし軽快傾向がなければ、結核、肺癌等の可能性を考え、呼吸器内科受診を勧めるのがよいと考える。
○副鼻腔炎と慢性咳(私見)
成書によると、副鼻腔炎では鼻腔が狭くなるため、吸気時に鼻漏が急速な気流とともに気管に吸入され、咳の原因となると記載されているが、そのようなことはあるのだろうか。副鼻腔炎の粘稠な鼻漏が通常の吸気時に遊離して、気流とともに気管に流入するとは考えにくい。もちろん、意識して強く吸気した場合には起こりえないことはないが、通常は一時的に咳き込むだけである。一方、副鼻腔炎の患者さんをたくさん診ている中で、単純な副鼻腔炎の場合には、咳発作はほとんどないのであって、咳が多いのはアレルギー性鼻炎が合併している場合である。以上の論拠より、単純な副鼻腔炎は少なくとも成人においては慢性咳の原因にはならないと考える。
(平成20年7月6日記)
○ウイルス感染が誘発する喘鳴にステロイド薬は効果みられず
Hans Bisgaardらは、乳幼児294例を、初回の喘鳴発現後にプラセボまたはブデニソニド吸入剤(400μg/日×2週)の投与群に無作為に割り付けし、両群を比較した。エンドポイントは無症状日数とした。3歳までに1,714件の喘鳴がみられたが、治療開始2週後には両群とも70%が無症状となり、ブデソニド吸入群とプラセボ群の無症状日数の推移に差は認められなかった。本成績では、喘鳴に対するブデソニド吸入剤による2週間治療はプラセボと差がないと結論された。(Bisgaard
H:NEJM 2006:354:1998)
Oommenらは、1~5歳の217例において、感冒発症から2日以内の急性の喘鳴に対するプレドニゾロン(20mg×5日間)とプラセボの効果を比較する二重盲検無作為化試験を実施し、症状スコア、入院日数、薬剤使用のいずれも両群間に差がみられなかったことを報告した。(Oommen A:Lancet 2003:362:1433)
Panickarらは、感冒発症から2日以内の急性の喘鳴のために緊急救命室を受診した1~6歳の小児700例において、ブレドニゾロン(20mg×5日間)とプラセボを比較する二重盲検無作為試験を実施し、入院日数、症状スコアなどに両群間に差がみられなかったことを報告した。(Panickar
J:NEJM 2009:360:329)
○痰
痰は気道からの分泌物であるが、以下の2種類に分類する。
①膿性痰: 細菌感染症によって集まった白血球が、粘液に混じったもので、黄色~緑色の粘調な痰である。
②透明痰: 粘液のみから成る痰であり、以下の2つの場合がある。
ⅰ. 風邪の初期のウイルス感染のみの段階で出る痰であり、細菌感染に移行しなければ、数日で止まっていく。
ⅱ. アレルギー反応に伴い分泌されるものであり、比較的継続して出る。
アレルギー素因のある人が、気道感染症を起こした場合は、まず、ウイルス感染に伴う透明痰が数日出たあと、細菌感染を起こすと膿性痰になり、1~2週間で細菌感染が消退すると、感染性アレルギーによる透明痰が長期にわたって継続するといったことがよくある経過である。
○頚部リンパ節腫脹を起こす疾患
1)頚部リンパ節炎
2)悪性腫瘍の転移
3)特殊性炎
・結核性リンパ節炎
・伝染性単核球症
・ネコひっかき病
・野兎病
・組織球性壊死性リンパ節炎