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○抗菌薬の使い方

第3回耳鼻咽喉科領域感染症臨床分離菌全国サーベイランス結果報告よりMIC90を掲載
(2003年1月〜5月)
抗菌薬 MSSA
黄色ブドウ球菌
MRSA
黄色ブドウ球菌
S.pyogenes
A群溶レン菌
S.pneumoniae
肺炎球菌
H.influenzae
インフルエンザ菌
P.aeruginosa
緑膿菌
オーグメンチン 有効 ≦0.06 1 16
セフゾン 0.5 256≦ ≦0.06 4 16 無効
バナン ≦0.06 2 8 無効
メイアクト 1 128≦ ≦0.06 1 0.25 無効
フロモックス 2 256≦ ≦0.06 1 4 無効
ジナセフ ≦0.06 4 128
クラフォラン ≦0.06 1 2
ベストコール 2 256≦ ≦0.06 1 0.5
ロセフィン ≦0.06 1 0.25
モダシン 8
タケスリン 4
アザクタム 8
ファロム 0.25 256≦ ≦0.06 0.5 8
ルリッド 0.25 128≦ 32
クラリス 128≦ 128≦ 0.125 128≦ 16
ジスロマック 128≦ 128≦ 0.5 32≦ 4
ミノマイシン 4 16 0.5
シプロキサン 1 128 2 2 ≦0.06 0.25
クラビット 0.5 64 2 2 ≦0.06 1
カルベニン ≦0.06 32 ≦0.06 0.125 4 16
メロペン ≦0.06 0.5 0.5 0.5
ケテック 0.125 256≦ ≦0.06 0.125 4
ハベカシン 1 2
バンコマイシン 1 1
タゴシッド 1 2
有効 やや有効 無効

○菌種別効果的な抗生薬(内服)
@MSSA黄色ブドウ球菌:ペネム>ニューキノロン=セフェム
AA群溶連菌:セフェム=ペネム>ニューキノロン
B肺炎球菌:ペネム>セフェム>ニューキノロン
Cインフルエンザ菌:ニューキノロン>セフェム>ペネム

第4回耳鼻咽喉科領域感染症臨床分離菌全国サーベイランス結果報告よりMIC90を掲載
(2008年1月〜6月)
抗菌薬 黄色ブドウ球菌 PSSP PISP PRSP BLNAS BLNAR BLPAR
サワシリン 64 ≦0.06 1 2 0.5 8 128
ユナシン ≦0.06 2 4 0.5 8 16
オーグメンチン 8 ≦0.06 1 2 0.5 16 16
ペントシリン 256≦ 0.125 2 4 ≦0.06 0.25 32
トミロン 0.5 1 2 ≦0.06 1 1
フロモックス 256≦ 0.5 1 1 ≦0.06 4 4
メイアクト 0.25 1 1 ≦0.06 0.5 0.25
フルマリン 8 0.25 4 8 1 16 16
ベストコール 32 0.25 1 1 ≦0.06 0.5 0.25
ロセフィン 0.5 1 1 ≦0.06 0.25 0.25
ブロアクト 0.25 0.5 0.5
ミノマイシン 0.25 1 0.5 0.5
クラリス 128 128 128 16 8 16
ジスロマック 32 32 32 4 2 4
スオード 16
クラビット 2 1 1 ≦0.06 ≦0.06 ≦0.06
オゼックス 0.25 0.25 0.25 ≦0.06 ≦0.06 ≦0.06
シタフロキサシン 0.5 ≦0.06 ≦0.06 ≦0.06 ≦0.06 ≦0.06 ≦0.06
アベロックス 2 0.25 0.25 0.25 0.125 ≦0.06 ≦0.06
ザイボックス 4
バンコマシン 1
カルベニン ≦0.06 0.125 0.125 1 4 4
メロペン 8 ≦0.06 0.5 0.5 ≦0.06 0.5 0.25
フェニバックス 1 ≦0.06 0.25 0.5 0.125 2 2
ファロム ≦0.06 0.25 0.5 1 8 4
タゴシッド 1
ケテック 64 0.25 0.25 0.125 4 2 2

○菌種別効果的な抗生薬(内服)
@PRSP:
ペネム>ニューキノロン>セフェム
ABLNAR:
ニューキノロン>セフェム>ペネム

○臨床分離株の各種抗菌薬に対する感受性率 (霧島正浩:診療と新薬 49,1147-1207,2012 より)
LVFX:クラビット STFX:グレースビット CPFX:シプロキサン ABPC:ビクシリン CVA/AMPC:クラバモックス PIPC:ペントシリン PCG:バイシリン
CTM:パンスポリン CFDN:セフゾン CPR:ブロアクト CAZ:モダシン IPM:チエナム MEPM:メロペン AZT:アザクタム GM:ゲンタシン 
AMK:アミカシン CAM:クラリス AZM:ジスロマック MINO:ミノマイシン CP:クロロマイセチン ST:バクタ (内服のみ 注射のみ 内服と注射)
 














 

○オラペネムの薬剤感受性


・肺炎球菌においては、TBPM(オラペネム)はCDTR(メイアクト)よりかなり高い感受性を示している。
・インフルエンザ菌においては、TBPM(オラペネム)はCDTR(メイアクト)よりやや劣るが、高い感受性を示している。

○感受性率のまとめ

  肺炎球菌  インフルエンザ菌 
ABPC(≒AMPC)   51.0%  42.8%
 CVA/AMPC(クラバモックス)  99.6%  48.9%
 CFDN(セフゾン) 44.9%  50.3%
 CFPN-PI(フロモックス)
   (≒CDTR-PI(メイアクト))
 92.4%  91.0%
 LVFX(クラビット)
   (≒TFLX(オゼックス))
 97.2%  98.5%
 TBPM(オラペネム) 高感性   感性

・肺炎球菌とインフルエンザ菌の両方に感受性が高いのは、フロモックス(≒メイアクト)、クラビット(≒オゼックス)、オラペネムである。
・クラバモックスは肺炎球菌には感受性が高いが、インフルエンザ菌には耐性である。

○肺炎球菌の薬剤感受性(山中ら 2012)


○インフルエンザ菌の薬剤感受性(山中ら 2012)

○抗菌薬の組織内濃度について
  内服薬が100%吸収されると仮定します。100mgの薬剤を体重50kgの人が内服した場合で、全身の組織に均一に分布すると仮定すると、組織内濃度は100,000μg/50,000g=2μg/g≒2μg/mLとなるのでMIC90が2μg/mL以上の薬剤は無効と考えられる。実際は吸収率が数分の1の事が多いので、さらにセーフティマージンが必要になると思われる。
 また、1回に服用するmg数が多く、吸収率の高い薬剤はその分だけ、組織内濃度が高まります。

○細胞内移行性が優れた薬剤のほうが、MICが大きくても効果が望めます。細胞内移行性が優れた薬剤として、ニューキノロン、マクロライド、テトラサイクリンなどがあります。

○慢性下気道感染症における抗菌薬の選択 -エンビリック治療の場合(経口薬)
 レスピラトリーキノロンが選択薬として最適である。(注:繰り返し使用することにより、緑膿菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌では耐性化を招くことがすでに報告されており、培養結果を見て狭域な抗菌薬に変更すべきである。)
@レスピラトリーキノロン:原因微生物となるすべての微生物をカバーする。(スパロフロキサシン、高用量のレボフロキサシン、トスフロキサシン)
Aセフェム系薬:ペニシリン耐性肺炎球菌、BLNAR、黄色ブドウ球菌には抗菌活性が劣り、緑膿菌および非定型病原体(マイコプラズマ、クラミジア)には無効である。
Bβ-ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬:Aと同様であるが、黄色ブドウ球菌には抗菌力が強い。
Cペネム系:Aと同様であるが、肺炎球菌、黄色ブドウ球菌に強く、インフルエンザ菌に弱い。
Dマクロライド系薬:肺炎球菌、インフルエンザ菌、黄色ブドウ球菌には抗菌活性が弱く、緑膿菌には無効である。
(日本呼吸器学会「呼吸器感染症に関するガイドライン」成人気道感染症診療の基本的考え方、2003 より)

○鼻咽腔の常在菌について
 健康な1歳児の70%がモラクセラ・カタラーリスを、50%が肺炎球菌を、30%がインフルエンザ菌を保有していることが示された。(Faden H et al:Ann Otol Rhinol Laryngol 100 (8):612.1991

○オレ流のコメント
・急性中耳炎、急性副鼻腔炎では、肺炎球菌、インフルエンザ菌が多いので、大人ではレスピラトリーキノロン(ジェニナック、アベロックス、クラビット、オゼックス)を第1選択とし、第2選択はセフェム(メイアクト、フロモックス)、第3選択は14員環マクロライド(クラリス(クラリシッド)、ルリッドを使用している。小児では、セフェム(メイアクト、フロモックス)を第1選択とし、第2選択はオラペネム、第3選択はオゼックス、第4選択はクラリス(クラリシッド)としている。
・急性咽喉頭炎で、溶連菌感染が疑われる場合には、セフェム(メイアクト、フロモックス)を第1選択としている。その他の場合はレスピラトリーキノロン(ジェニナック、グレースビット、アベロックス、クラビット、オゼックス)を第1選択にしている。
・外耳炎などで黄色プドウ球菌感染が疑われる場合には、セフゾン、グレースビットを使用しています。
・慢性中耳炎などで緑膿菌が疑われる場合には、スオード、グレースビットを使用しています。
・抗生剤は3日投与すれば、有効無効がわかるので3日投与でもよいが、患者さんの通院の便を考えて5日処方を原則としています。効果がある場合には5日でほぼ完治するであろうし、5日処方で効果なければ多剤に変更が必要であろう。

(2014.5.30記)

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○睡眠薬

各睡眠薬の特徴
  ベンゾジアゼピン
受容体刺激薬(BZ) 
メラトニン受容体
刺激薬<MT>
(ラメルテオン) 
オレキシン受容体
拮抗薬<OR>
(スポレキサント) 
催眠作用   強い  弱い  中等度
 抗不安作用  弱い〜強い  なし  なし
 即効性  早い  遅い  早い
 体内時間
調整作用
 なし  あり  なし
 効果持続
時間
 さまざま  短い  中等度
 副作用  多い  非常に少ない  少ない
 安全性  低い  非常に高い  高い
 睡眠構築の
変化
 浅睡眠化、呼吸機
能低下、REM睡眠
の減少など
 なし  ほとんどなし
 好適症例

  (和田大和 他 Medical ASAHI 2016 February P16-17)

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輸液
○脱水には2種類ある
@volume depletion (細胞外液の欠乏)
 ・原因:嘔吐や下痢によって細胞外液を比較的急速に喪失する。
 ・治療:細胞外液を足す目的で、浸透圧が細胞外液と同等な「等張液」の生理食塩水を投与する。
Adehydration (水の欠乏)
 ・高齢者の熱中症や水の摂取不足などによって、まず細胞外液から徐々に水分が失われ、その不足分を細胞内液から補充するために全体の水分が失われる。
 ・治療:水分のみが補充される5%ブドウ糖液を投与する。
日本には生理食塩水とブドウ糖の両者が"絶妙に"ブレンドされた1〜4号輸液が存在する。2号液、3号液にはKが含まれるため、高K血症になって心室細動や心停止を起こすようなことは確実に避けるため、血中K濃度が確認できるまでは2号液、3号液は投与しない。

○電解液輸液製剤の分類
@等張性電解質液(等張液)(浸透圧が細胞外液とほぼ等張)(いずれかの製剤も、蘇生液として使用した際も、蘇生率には差がないという報告もあり、結局のところ、安価な生食を用いる施設が多い)
 ・生食:NaとClの濃度が同等であるが、実際の生体では、Na濃度のほうがCl濃度よりも高い。
 ・リンゲル液:生食より細胞外液に近付けるため、カルシウムやカリウムを添加して陽イオンの組成を近似させたもの。Na濃度よりもCl濃度が高い。
 ・乳酸リンゲル液:リンゲル液に、緩衝剤として乳酸イオンを添加したものでClよりNaの濃度が高く、より生理的な組成となる。
 ・酢酸リンゲル液:緩衝剤として酢酸を添加したものである。乳酸の代謝を行うのは肝臓のみだが、酢酸は筋肉でも代謝されるため、肝障害時に有利だと考えられている。
 ・重炭酸リンゲル液:緩衝剤として、重炭酸を添加したものである。生体内にあるものをそのまま投与できることから、蘇生液のファーストチョイスになっているが、やや高価である上、重炭酸が不安定であるため管理には注意を要する。
A低張電解質液(低張液)(血漿の電解質濃度より低張)
 ・1号液:細胞外液よりNaの濃度が低く、Kを含まないため、腎機能障害があっても使える点で、病態が不明な急患に投与しやすい。
 ・3号液は手術などで経口摂取ができない、もしくは経口摂取が不十分な場合に、電解質と水分を補給・維持する目的で使用する。3号液を1日2L投与すればそれらを最低限補うことができる。いわば、尿などで排泄される電解質と水分と同等の成分が含まれている。

○低Na血症の3つのパターン

 病態 水とNaの過剰(水優位)   水の過剰 Naの欠乏 
 主な
原因
・うっ血性心不全
・肝硬変
・末期腎不全
・内分泌疾患(副腎不全、SIADH、甲状腺機能低下症など)
・低張液の大量摂取(低張液の漫然投与、心因性多飲症など)
・消化管からの喪失(嘔吐、下痢、腸閉塞など)
・熱傷
・利尿薬の過剰投与
 主な
治療法
・水、Na摂取制限
・利尿薬の投与
・水摂取制限
・原疾患の治療
・Naの投与
・原因薬剤の中止

・腎機能が低下している患者に、尿よりも低張な輸液(3号液)を漫然と投与すれば低Na血症を容易に発症しうる。

○血漿増量剤(膠質液)の使用場面は激減しいる
血漿増量剤(膠質液)は投与した輸液がすべて血漿内にとどまる。かつて、有効循環血漿量を増やすためには、血漿増量剤の投与が望ましいと考えられ、循環血液量減少性ショックなどに用いられてきた。しかし近年、ICUでの輸液蘇生においては、生理食塩水を用いても死亡率に差はないといった報告などが散見されるようになった。今では術中など場面が限られている。

引用元:特集 輸液の誤解 NIKKEI MEDICAL 2014.07 P47-65

○しゃっくり
@概念:しゃっくりは器質的疾患がない場合でも、急激な温度変化や急いで食事をした時などに起こり、数分あるいは数時間で消失するため、治療の対象にはならない反面、頻回、長期にわたる頑固なしゃっくりの治療は困難なことがあります。
A発症機序:しゅっくりの発症機序は不明ですが、原因により中枢性と末梢性に分けられます。
 中枢性の原因としては、脳腫瘍、脳出血、脳梗塞、脳炎などによる中枢刺激があげられています。末梢性の原因としては、食道腫瘍、横隔膜ヘルニア、心膜炎、気管支炎、喘息などによる横隔神経、迷走神経刺激や肝、腎疾患による横隔膜刺激があげられます。
Bしゃっくりの止め方(m3.com クリニカルパールhttp://medqa.m3.com/doctor/showMessageDetail.do?messageId=165943&portalId=mailmag&mmp=EO130306&mc.l=8702734&redirectKey=1364817341924277より抜粋)
A. 自分でできる方法
@水を少量ずつ9回飲み込みます。ベトナムの民間療法です。
A水を口にいっぱい含んで、起立してお辞儀をする格好でごっくんと飲み込む。
B顎側に水の入ったコップを持ち、コップの縁が上の前歯〜唇にあてる。この状態で前傾させて水を吸い込むように飲ませる。
C深呼吸をして息を止め腹筋に力が入った状態で水を飲みます。ゴクゴクと2回ほど飲み込みます。
D鼻をつまみ(手でつまんでもいいし、洗濯はさみのようなものでもいいです)、口から息を吸わないように注意して、息を止めたまま3-4回飲水します。
Eまず、息を思いっきり吸います。これ以上吸えないくらい吸った状態で最低1分間こらえます(その間にしゃっくりが出るようなら、充分に吸えていない)。これで、ほとんどのしゃっくりは止まります。

F食塩を小匙半分くらい舌の上に置く。
G酢を20mLほど一気に飲む。
H甲状軟骨を圧迫しつつ、顎を引き、唾を呑み込む。
I上向きに寝かせ、冷水を2mLほど鼻に注入する。
J砂糖スプーン1杯、一気に喉の奥に流し込む。レモン汁でも可。
K20%ブドウ糖注射液を飲んでもらう。
L柿のへた
【作り方その120-25個の柿蔕を300-400mLの水が半量になるまで煮詰め、冷めてからガーゼで濾したのが13回分。味はやや渋く、飲めないほどではない。鍋は色がついて消えなくなる。
【作り方その2】柿蔕3個くらいを200-300 mLの水で20-30分煎じる。
【柿蔕の入手方法】
生柿でも、干し柿に付いているへたでもいい。薬局によっては、柿蔕そのものや「柿蒂湯(柿蔕5g、丁香1.5g、生姜4g)」のエキス剤が購入できる。
B. 漢方
(1)呉茱萸湯:冷たいものを食べて起こるしゃっくり、頭痛・吐き気が強い(片頭痛持ちに効く)
(2)半夏瀉心湯:心窩部のつかえ、悪心、吐き気。半夏寫心湯1Pに生姜のしぼり汁を2-3滴混ぜると、柿のへたが無効だった患者にも有効でした。
(3
)調胃承気湯:腹満感、便秘を伴うもの
(4)茯苓飲:胃液の分泌が過多で、悪心、吐き気があるもの
(5)芍薬甘草湯:筋痙攣と考え処方。病院に常備しておく薬なら芍薬甘草湯が一番使いやすいと思います。
C. 医師による手技
@しゃっくりをすぐに治すのであれば、咽頭反射を起こさせるのが一番です。舌圧子で舌根を軽く刺激すると「おえっ」となって止まります。患者に舌圧子を持たせて帰します。
A舌圧子で有無を言わせず舌根部を持続圧迫。
Bしゃっくりが止まらない患者には、口を開けて舌を出してもらい、医師がガーゼで舌の上の真ん中に親指を置いてはさみ、引き出すように手前に引き、下方へ引っ張る。この時、患者には力を抜くように言い、「はあ〜」って唸ってもらうとうまくいきます。他動的に徐々に、おもいっきり引っ張るのがコツ。舌の力が抜けてきたらうまくいってます。引っ張るのはだいたい
2-3分です。
C舌圧子で口蓋垂を下から支えるように5秒ほど保持する。患者さんに口を開けてもらいます。この時点で口蓋垂が見えない患者さんには不向きです。舌圧子(私は木製のディスポを使用しています)の先端部分で口蓋垂を5秒間くらい支えるようにします。咽頭の壁に舌圧子があたると嘔吐反射が出ますが、それが起こらないように口蓋垂だけを狙います。
D両側の扁桃外側部の前口蓋弓を、咽頭捲綿子で上下に何回かこすると良い。患者が吐きそうになるくらい、しっかりこするのがポイントです。
E咽頭反射を止めるとしゃっくりも止まります。具体的には咽頭巻綿子にキシロカインをつけて、咽頭反射を誘発する部位(咽頭側索、舌根部)に触れていると止まります。圧迫しても反射が出ないのが表面麻酔の目印です。ボスミンを加えると1時間は効いています。
F古来からある足裏刺激法です。足底の真ん中あたりをきつく指圧します。かなり痛がらせるほうが効果があるようです。経口摂取ができなくなっている方でも、ねたきりに近い方でも生きていれば、足裏への刺激には身体が反応しますので効果があります。
Gまず、やってみるのは手のひらのほぼ中央にある”労宮”というツボの圧迫。患者の両手の労宮を術者の母指で痛くなるくらい強く、10秒間くらい圧迫します。
H両耳を人差し指で強く栓をして20秒ほど数える。舌咽神経の咽頭枝の近辺を外耳を圧迫することで反射弓をブロックできるようです。
I首の付け根、横隔神経の走っているところを両側とも親指で押し、待っているとしゃっくりが止まります。
Jマーゲンチューブの通常の太さのものの先にキシロカインゼリーをつけて、片側の鼻からゆっくりと挿入します。そしてチューブ先端が中咽頭付近にきましたら、後壁を
5-10回こすりつけるように刺激します。これで処置終了です。
Kキシロカインスプレーを鼻からいれ、のどチンコの裏めがけて3発だけかます。キシロカインは、ゴックンしてもらう。(食道、胃からは吸収されない)。4割が止まる。
L
50%ブドウ糖20mLをシリンジに吸い、咽頭目がけて一気に噴射。高濃度糖液による持続的な咽頭刺激でしゃっくりを抑制できるでしょう。
D. 薬剤
@ランドセン(リボトリール)を1錠(1mg)、その場で飲ませる。60分待たせて(8割止まる)、止まらなければ、2錠分2で3日処方して返す。3日経てば自然治癒。
Aクロナゼパムを
1錠(1mg)、その場で飲ませます。60分待たせれば8割は止まりますが、止まらなければ、2錠分23日処方して帰します。
Bクロルプロマジン(ウインタミン)50mg 1回内服するだけで止まります。適応症にも吃逆と明記してあります。
Cバクロフェン処方を友人に教わり、半信半疑で使用し始めて
2年。意外や意外、高齢者でPEGの適応になるような方にぴたっと効きます。
D難治性のしゃっくりに対しては、クロルプロマジン(コントミン)
25mg筋注が効くことが多いです。効能として吃逆と記載されています。無効ならさらに追加で25mg筋注します。クロルプロマジンで抑制してから、クロナゼパム1.5 mg/日分3を投与しています。
Eプリンペラン1Aのゆっくり静脈注射が2-3日も続くしゃっくりを止めることができます。ただし、静注によって約1分ほど血圧が下がります(血圧が正常範囲なら、収縮期血圧70mmHgほど)。ショックもあるようですので、観察下で行ってください。また、褐色細胞腫をお持ちの方は血圧が上昇します。

○オレ流のコメント
 しゃっくりを訴えて受診される患者さんが、数年に1人くらいいました。対応に困っていましたが、m3クリニカルパールで取り上げてくれたので、それをまとめてプリントして患者さんに渡して、自分でやってもらうようにしました。それでも止まらない患者さんは、特殊な薬剤が必要なので、病院に紹介します。(2014.5.30記)

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経皮的エタノール注入療法(percutaneous ethanol injection therapy: PEIT)
適応疾患: 頭頸部領域のあらゆる良性の嚢胞性疾患
手技:
@エコー、CT等で嚢胞を確認した後、静脈留置針(サーフロ等)で穿刺する。
A内容液をできるだけ、吸引除去する。粘稠な場合は、生理食塩水で洗浄する。
B99%純エタノール4〜8mlで内腔を洗浄した後、新たにエタノールを2〜4ml注入して終了する。
1回の注入で消失する場合もあるが、嚢胞が大きい場合には数回の注入を必用とする。
                       (専門医通信 第82号 家根旦有 より)

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○蘇生措置
突然意識を失って倒れた人を蘇生させるための応急手当は、心臓マッサージだけで効果があり、人工呼吸は必要ないことが日本救急医学会関東地方会の調査でわかった。・・・倒れてから30日後の時点で、介護なしで日常生活が送れる状態に回復した割合は、両方受けた患者が4%、心臓マッサージだけの患者は6%で、人工呼吸なしでも変わらなかった。
 (平成19年9月27日 毎日新聞社)

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○唾液腺疾患
A.炎症性疾患
@急性化膿性耳下腺炎
・ステノン管開口部からの膿汁排泄がみられる。
A反復性耳下腺炎
・ステノン管開口部からの膿汁排泄がみられる。
・多くは10歳以降に自然治癒する。
B線維素性唾液管炎
・アレルギーの関与が強く示唆され、RIST、RAST 検査で陽性の例がしばしばみられる。
・唾液腺の腫大と、唾液腺管開口部から好酸球の集積による白色線維素塊が排出されるのが特徴である。
・ステロイドや抗ヒスタミン薬の有効例がみられる。
・唾液管の洗浄やステロイドの導管内局注も有効で、唾液腺内視鏡で管拡張を観察、同時に洗浄を行う。
C木村病(軟部好酸球肉芽腫症)
・青年期から壮年期の若いアジア系の男性に好発する。
・耳下腺部に多くみられ耳下腺腫瘍を疑わせる腫脹を示す。
・特にT型アレルギーを背景とすることが示唆されている。
・軟性〜弾性軟の腫瘤で周囲との境界は不明なことが多い。
・掻痒感や皮膚色素沈着を伴う例もある。
・血液検査では好酸球の上昇と IgE 抗体陽性例、特に抗カンジダIgE 抗体陽性例が多くみられる。
・病理組織学的には好酸球の浸潤、リンパ濾胞様構造の新生が特徴である。
・治療は薬物療法としてステロイド、抗ヒスタミン薬、NSAIDS などが使われるが易再発性である。
・治療抵抗性のものでは減量〜全摘出術が選択される。

B.シェーグレン症候群
・口腔乾燥症の代表的疾患である。
・耳下腺造影で導管の嚢胞状拡張や狭窄、点状・顆粒状の陰影を示す漏洩像が病態に応じてみられる。
・判定はRubin-Holt の分類がしばしば用いられる。
・MRI シアログラフィーは唾液腺に直接造影剤を注入せずに、高分解能MRI で耳下腺内導管系以外の軟部組織の信号を抑制し、通常の造影剤注入耳下腺造影に近い所見が得られる方法である。

C.腫瘍性疾患
@多形腺腫
・ MRI はT1 強調で低信号、T2 強調で高信号を示すが、組織像によっては造影CT と同様に不均一な像を呈する。
Aワルチン腫瘍
・ MRI のT1 強調で低〜中等度信号、T2 強調で低〜高信号とさまざまで上皮成分とリンパ濾胞成分が多くなると低信号を、嚢胞成分が多ければ高信号を示す。
B悪性腫瘍
・ MRI は一般に良・悪性ともにT1 強調で低信号を示し、T2 強調で高信号を示すのは良性か低悪性の腫瘍で、高悪性の腫瘍は低信号あるいは低信号と高信号の混在したものとなる。
・高悪性や周囲へ浸潤している場合は、悪性腫瘍の一般的所見である境界不明、辺縁不整像を示すが、小さい腫瘍や低悪性腫瘍では良性腫瘍との鑑別は難しい。
・テクネシウムシンチグラムでは腫瘍部分は一般に陰性で欠損像を示すが、ワルチン腫瘍、オンコサイトーマの多くの症例では陽性像を示す。テクネシウムを静注後に酸味刺激を行うと90%以上の診断が可能とされている。
・PETはワルチン腫瘍や多形腺腫をはじめとする良性腫瘍でも陽性を示すことがある。

D.IgG関連疾患(ミクリッツ病とキュットナー腫瘍)
・IgG関連疾患は今世紀に入り本邦より提唱された新しい疾患概念であり、高IgG4血症および組織学的にIgG陽性形質細胞浸潤・線維化がみられ腫瘤性、肥厚性病変を特徴とする全身性・慢性炎症性疾患である。唾液腺疾患ではシェーグレン症候群の一亜種とされていたミクリッツ病は歴史的変遷を経て、頭頸部領域の代表的IgG-RD
として位置づけられた。
・両側性、無痛性の涙腺、唾液腺腫脹を示す疾患にミクリッツ病という名称が使われてきた。
・白血病、悪性リンパ腫、サルコイドーシスなどの基礎疾患が明らかなものはミクリッツ症候群として区別される。
・慢性硬化性顎下腺炎(キュットナー腫瘍)のうち唾石や感染性の顎下腺炎を除くものはIgG4関連ミクリッツ病と共通点が多く存在し、同一の疾患カテゴリーに入ると考えられる。

(表)IgG4関連ミクリッツ病の診断基準(日本シェーグレン症候群学会、2008)
 1)涙腺・耳下腺・顎下腺の持続性(3ヵ月以上)、対称性に2ペア以上の腫脹を認める。
 2)血清学的に、高IgG4血症(135mg/dl)を認める。
 3)涙腺・唾液腺組織中に、著明なIgG4陽性形質細胞浸潤(強拡大5視野でIgG4陽性細胞/IgG陽性細胞が40%以上)を認める。
 診断は1)は必須、および2)または3)を満たすものをIgG4関連ミクリッツ病とする。

・治療の主体は副腎皮質ステロイドであるが、しばしば自己免疫性膵炎、間質性肺炎や腎炎、後腹膜線維症などの合併がある。
・プレドニゾロン(PSL)0.6mg/kg/dayから開始して2〜4週間継続、高い再燃率(約20%)を考慮して4〜6ヵ月かけて漸減し、PSL5〜7.5mg/dayを維持量とする。
 (氷見徹夫:IgG関連疾患の診断と治療. 日耳鼻2014:117: P1136-1139)


E.その他、全身疾患と唾液腺病変
@唾液腺症
・非炎症性、非腫瘍性に両側唾液腺腫脹を来す疾患で、多くは無痛性で、腫脹は持続性のものと反復性のものがみられる。
 1)自律神経の変性による分泌顆粒の合成・放出障害。
 2)持続性の分泌刺激による腺の肥大(work hypertrophy)。
 3)筋上皮細胞の変性。
 などが推測されている。拒食症や過食症、過剰ダイエット、降圧剤や向神経薬の連用などに伴う唾液腺腫脹では本疾患を疑う。基礎疾患の治療を優先し、内服治療としては口腔乾燥症に用いるムスカリン作働薬が有効な例がある。
AMALTリンパ腫
・抗SS-A抗体や抗SS-B抗体の陽性例や血中sIL-2Rが高値を示すことが多い。この場合は生検や腫瘍摘出により病理診断で確定する。治療法は血液内科や化学療法科との連携が大切で、耳下腺に限局している場合は放射線感受性が高いことから放射線療法が選択されることが多い。
Bメトトレキセート関連リンパ増殖病変
・MTXの長期投与により細胞性免疫が低下し、発熱、全身倦怠、体重減少、リンパ節腫脹などの臨床症状を呈し、病理組織学的に悪性リンパ腫様の所見を示す。EBウイルスの既感染例が多い。治療はMTXを中止または減量し自然寛解を待つが、症状に応じて化学療法を行う。
CHIV関連唾液腺疾患
・唾液腺内に嚢胞形成がみられる。ブレオマイシンの局注を6〜10週にわたり投与して著効した例が報告されている。
    (吉原俊雄:唾液腺疾患の診断と治療:日耳鼻116、P1050-1053 より要約した。)

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○肺炎球菌ワクチン
・肺炎球菌の成人の保菌率は5〜10%、小児では20〜40%
・肺炎球菌は莢膜の性質により94種類に分類され、そのうちの約30種類に病原性があるとされており、肺炎球菌ワクチンを接種することで発症、重症化の抑制が期待される。
・成人に使用できる肺炎球菌ワクチンは、23価莢膜多糖体型肺炎球菌ワクチン(PPSV23)と13価蛋白結合型ワクチン(PCV13)で、いずれも不活化ワクチンである。

  PPSV23(ニューモバックスNP)の特徴   PCV13(プレベナー13)の特徴
   1988年から65歳以上の高齢者と2〜64際のハイリスク群を対象に使用されている。  2014年から65歳以上の高齢者に使用できるようになった。
長所   肺炎球菌の莢膜型の高いカバー率である。  強力な免疫原性である。
 カバー範囲  23種類の莢膜型(1、2、3、4、5、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、33F)が含まれ、日本人の侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)の約70%をカバーできる。  13種類の莢膜型(1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、23F)が含まれIPDの約48%をカバーできる。
 免疫原性  T細胞を介さずにB細胞を直接刺激するために免疫記憶が得られず、追加接種によるブースター効果が得られない。  肺炎球菌多糖体にキャリア蛋白として非病原性ジフテリア蛋白(CRM)を結合させることによって、多糖体はT細胞依存性に変換されるため、これにより免疫記憶が得られ、追加接種によるブースター効果が得られる。
 接種対象  65歳以上の高齢者及び2〜64歳の肺炎球菌感染のハイリスク者と適応範囲が広く、特に脾摘患者は保険給付の対象である。  65歳以上の高齢者に限られ65歳未満の成人には使用できない。
 接種費用  平成26年10月1日から、65歳以上の高齢者と60歳以上65歳未満で心臓、腎臓もしくは呼吸器の機能またはHIVによる免疫の機能に障害を有する人に対して、定期接種が開始された。  接種費用は自己負担である。
接種方法   1回0.5mLを筋肉内または皮下に接種する。  1回0.5mLを筋肉内に接種する。
 副作用  局所反応全般55.8%、全身反応全般45%であった。  局所反応全般45%、全身反応全般37.9%であった。
臨床的予防効果  IPDを74%抑制する。
著者らのRCTで、肺炎球菌性肺炎を63.8%、肺炎全体を44.8%、抑制し、肺炎球菌性肺炎の死亡率を下げた。
免疫抑制患者に対しては効果が乏しい。
 PCV13がカバーする莢膜型について、非侵襲性肺炎球菌性肺炎を45%、IPDを75%削減し、すべての莢膜型でも肺炎球菌性肺炎を30.6%、IPDを51.8%削減する。
ワクチンの予防効果が乏しいとされる免疫抑制患者に対しても予防効果が期待される。



(丸山 貴也:INFECTION FRONT Voi.36 2016 P4-7 を要約した。) (2016.8.30記)

○オレ流のコメント
 肺炎球菌ワクチンに2種類あることは知っていたが、その性質がまったく違うことがわかった。肺炎球菌ワクチンを効率的に使うのは、かなり難しいことがわかった。

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○過敏性腸症候群
@概要
 日本人では10〜15%に認められ、消化器科を受診する人の3分の1を占めるほど、頻度の高い病気です。発症年齢は20〜40代に多く、男女比は1対1・6で、やや女性に多くみられます。便通の状態により、便秘型、下痢型、交代型の3つに分類されますが、男性では下痢型、女性では便秘型が目立ちます。 
A原因
 腸の運動を司る自律神経に異常があったり、精神的不安や過度の緊張などを原因とするストレスなどが引き金となる場合がある。また、元々神経質な性格であったり自律神経系が不安定であったりする人が、暴飲暴食やアルコールの多量摂取などを行ったり、不規則不摂生な生活、過労や体の冷えなどの状態に置かれた場合に症状が発生する場合がある。近年、過敏性腸症候群(IBS)にはセロトニンという神経伝達物質が関係していることが指摘されている。セロトニンは、その約90%が腸内にある。ストレスによって腸のセロトニンが分泌されると、腸のぜん動運動に問題が生じ、IBSの症状が現れるとされている。
 「腸と脳は、『脳腸相関』といって、密接な関係があります。というのも、腸には脳と同じ神経が多く分布し、それらは自律神経でつながっているからです。脳が感じた不安やプレッシャーなどのストレスは、自律神経を介して腸に伝わり、運動異常を引き起こします。また、下痢や便秘などの腸の不調も、自律神経を介して脳にストレスを与えます。つまり、脳腸相関によって、ストレスの悪循環が形成されるのです。過敏性腸症候群の場合は、特に腸が敏感になっていますから、ちょっとしたストレスにも反応します。また、少しの腹痛でも脳は敏感にキャッチし、不安も症状も増幅していきます」
A症状
 腹痛もしくは腹部不快感と便通異常です。腹痛は、左下腹部に最も多くみられますが、部位が一定しないものも少なくありません。腹痛の性状は、発作的に起こる疝痛(せんつう)(さし込むような痛み)、または持続性の鈍痛のいずれかで、便意を伴っていることが多く、排便後に一時的に軽快する傾向を示します。一般的に、食事によって症状が誘発され、睡眠中は症状がないという特徴があります。  その他、腹部膨満感、腹鳴(ふくめい)(おなかがごろごろ鳴る)、放屁などのガス症状も比較的多くみられます。また、頭痛、疲労感、抑うつ、不安感、集中力の欠如など、さまざまな消化器以外の症状もみられることがあります。 発作が起きている間は、消化管の収縮は強まり、より頻回に起こり、食品や便が大腸を急激に通過するので下痢が起こります。けいれん痛は大腸の強い収縮と、伸張と圧力に対する大腸上の受容体の感受性の亢進する結果として起こります。発作はほとんど常に目覚めているときに起こり、寝ている人が発作で目覚めることはまれです。
 急いで食べたり、長い間何も食べなかった後に食事をすると、過敏性腸症候群の発作が起こります。
 痛みは持続する鈍痛あるいはけいれん痛の発作として現れ、下腹部に起こります。
B治療
 過敏性腸症候群の治療は、(1)生活・食事指導、(2)薬物療法、(3)心身医学的治療、の3つが基本になります。生活習慣のなかで、不規則な生活、睡眠不足、慢性疲労の蓄積、睡眠不足、心理社会的ストレスなど、この病気の増悪因子と考えられるものがあれば修正を試みます。症状を悪化させる食品(大量のアルコール、香辛料など)の摂取はひかえましょう。食物繊維の摂取は、便秘または下痢どちらのタイプにも有効なので積極的にとるべきです。
 薬物療法が必要な場合は、高分子重合体、消化管運動調節薬、漢方薬などがまず投与されます。下痢に対して乳酸菌や酪酸菌製剤(いわゆる整腸薬)、セロトニン受容体拮抗薬、止痢(しり)薬、便秘に対して緩下薬、腹痛に鎮痙(ちんけい)薬が投与されることもあります。これらの薬剤で改善がみられない場合は、抗不安薬、抗うつ薬が考慮されます。
 消化管の機能を遅くする抗けいれん薬が処方されることがよくありますが、過敏性腸症候群ならだれにでも効果があるという保証はありません。
 イリボーという薬剤は遠心性神経のセロトニン5-HT3 受容体に拮抗することによって下痢を改善し、求心性神経のセロトニン5-HT3 受容体に拮抗することによって腹痛を改善します。通常、男性における下痢型過敏性腸症候群の治療に用いられます。
(goo ヘルスケア 武田 宏司 参照)

(平成24年4月29日記)

○蕁麻疹
 真皮に存在する肥満細胞が何らかの刺激を受けて、ヒスタミンが放出されて、皮膚の毛細血管に作用して、血液成分が血管外に漏れ出して、ミミズ腫れ、膨疹や紅斑が生じ、神経に作用してかゆみが生じる。その発症機序には、アレルギー性と非アレルギー性とがある。
@原因

・蕁麻疹を起こす刺激・誘因

食品  そば、エビ、カニ、薬物など(アレルギーで起きる)
サバ、マグロなどの青魚(魚肉が古くなりヒスタミンが産生される)
豚肉、タケノコ、もち、香辛料など
食品中の防腐剤、人口色素、サリチル酸 
 薬剤  抗生物質(ペニシリン、セフェム系など)
解熱鎮痛剤
降圧剤(血管性浮腫の原因になることがある)
 物理的刺激 皮膚のこすれ、寒冷、温熱、日光、圧迫など 
 発汗  入浴、運動、精神的緊張(冷や汗)など
 その他  感染症、疲労、ストレスなど

・誘因が明らかでない蕁麻疹
 70%以上の患者さんでは誘因が明らかではない(特発性の蕁麻疹)。このタイプの蕁麻疹は毎日のように症状があらわれます。発症して1ヵ月以内のものを急性蕁麻疹、1ヵ月以上持続するものを慢性蕁麻疹という。なぜこのような蕁麻疹になるのかまだ良くわかっていない。
 誘因が明らかでない蕁麻疹でも、多くの場合、疲労やストレス、感染など、さまざまな因子が症状を悪化させることが知られている。



A治療
 特定の刺激により症状があらわれる蕁麻疹では、特定の刺激を避けることが重要であり、自発的に症状があらわれる蕁麻疹では、薬物療法をおこなう。
・薬物療法
 抗ヒスタミン薬を内服する。

(症例)
平成26年5月29日夕より突然、蕁麻疹が出現した。誘因として、疲労、急な気温上昇があった。その後、数時間で消えたり、再発したりを繰り返していた。
セレスタミン2錠、ペミラストン10mg、ゼスラン1錠内服するも症状変わらなかった。痒みの強いときには、リンデロンVG軟膏が効果あった。
平成26年6月4日朝まで発疹があったが、アレロック1錠とゼスラン1錠内服したら、急速に改善して、発疹が消えた。抗アレルギー剤が著効するようである。